_20260914追加

2026年10月18日日曜日

BMW F31 320d タイミングチェーンテンショナー交換

 N47のタイミングチェーンは、クランクからの入力がカムシャフトへの出力のみならず、高圧ポンプの駆動にも出力されます。従い、カムシャフトを駆動しているタイミングチェーンには相応の次数の入力が入り、結果としてタイミングチェーンの伸びにつながります。特に、オイルメンテナンスが悪い車両の場合、各部位の機械抵抗が増加し、チェーンにかかる負荷が増大することでチェーンの伸びを加速させることになります。前回の記事の末尾に記載したように、このタイミングチェーンの伸びを抑え込む機能をもつ部品がタイミングチェーンテンショナーになります。

タイミングチェーンテンショナー:下図No.10

Drawing of Timming chaine Tensioner

N47の場合、オリジナルのチェーンテンショナーのストロークでは、その弛みを抑え込めない領域まで伸び過ぎたタイミングチェーンの場合、最大限ストロークしてもチェーンの張りを維持できず、

  • 弛みでチェーンが暴れ
  • ガチャガチャという異音の発生
  • 結果として樹脂のチェーンガイドレールを破壊
  • カムスプロケのコマ飛びを起こし
  • ピストンがバルブを突き上げてエンジン逝去
という流れとなります。B47ではこの対策として、

1. チェーン自体の強度・品質向上
チェーンのコマが伸びるのを防ぐため、チェーンそのものが大幅に強化されました。リンクプレートの肉厚が増して高剛性化されたほか、耐摩耗性を高める特殊な表面コーティング(チタンコーティング等)やローラー形状の最適化が図られています。
2. 油圧テンショナーの圧力保持機構の改良
ご指摘のテンショナーに関しては、単にストローク(押し幅)を確保しただけではありません。エンジンオイルの圧力変動(油圧の急な変化)に対しても、内部の圧力をより確実に保持できるチェックバルブ等の内部構造の変更が行われています。これにより、冷間始動時や低回転時の油圧が低い状態でも、チェーンのバタつき(緩み)を強固に抑制します。
3. ガイドレールの材質変更による耐久性強化
N47では樹脂(プラスチック)製のチェーンガイドレールが熱や経年劣化でもろくなり、削れたり破片がオイルパンに脱落したりすることが引き金となっていました。B47では、経年変化による脆化(割れやすさ)や摩耗に対してはるかに高い耐性を持つ改良プラスチック樹脂へと材質がアップグレードされています。
4. 潤滑(オイル供給)ルートの見直し
チェーン駆動部に直接届くオイルの供給ルート(オイルフィードパイプの位置やノズルなど)が改良されました。これにより、高負荷時でもチェーンやスプロケットの噛み合い部分に対して十分なエンジンオイルが絶え間なく供給され、摩擦熱と摩耗を最小限に抑えています。
5. 駆動負荷(共振や振動)そのものの低減
チェーンが引き伸ばされる最大の原因は、駆動時にかかる「急激なトルク変動(衝撃)」です。B47では、特に負荷の大きかった高圧燃料ポンプ(HPFP)のスプロケット構造(ツインコグの改良)やカムタイミングの最適化、さらにはECUのエンジンチューニングにより、タイミングギヤ全体に伝わる有害な共振(ハーモニクス)や応力ストレスそのものを大幅に軽減させています。
タイミングチェーン関連部品を全てB47用の部品に交換すれば完璧ですが、基本的にエンジンを降ろして作業する必要がありますので、コストを含め現実解ではないように思います。そこで、延命措置として、今回、当方の車輛については上記のNo.2の対策品(ストローク量増加+8mm品)の交換を実施しました。機能破綻の最上流はタイミングチェーンの伸びですが、その次の減少としてはチェーンの暴れが破壊の主因ですから、これを抑え込むことに対策の主目的としました。後はオイルメンテナンスをしっかり行い、各部の良好な潤滑状態を維持させることとします。(尚、N47のテンショナーについては純正を発注すると、この対策品が出てくるようになっています)

タイミングテンショナー対策品:純正品番11318490219
Improved Timing Chaine Tensioner

2面幅は24mm
Improved Timing Chaine Tensioner_2

全長は94mm。オリジナルは86mmとなります。(+8mmのストローク)
Improved Timing Chaine Tensioner with scale

ところで、交換前に現在の車輛の状況の把握をしておきます。
顕著に伸びたチェーンの場合、このテンショナーからオイルが抜けた状態の冷間始動時にチェーンが暴れ、ガチャガチャと異音が出るということですが、当方の車輛は特に気になる異音はありません。(走行距離12.8万kmにしてはかなり調子は良い)
また、カムシャフトアングルセンサーが設置してあるので、クランクアングルセンサーとの差異で恐らくチェーンの伸びを見ているはずと考え、調査したらやはりありました。きちんと基準値まで設定してありました。

■カムシャフトアングルずれ基準値: -2 ~ +2deg (設計基準は勿論0deg)
 これを超える場合にはチェーンシステムの交換を推奨されています。

そこで、当方の車輛はというと、、Bimmerlinkで調べました。計測するごとに異なる数値が出るため、主にアイドリングですが水温条件を変えて5回ほど計測しました。

■計測ラベル名:Offset Angle for Camshaft (Raw Value)

計測結果: -0.39 ~ +0.16deg    Ave. -0.11deg (5回計測の平均)

伸びればカムアングルはクランクに対して遅れるはずですので、マイナスとなります。
遅れの最大値が-0.39degでした。
Hard copy of Bimmerlink

アドバンス側の最大値が+0.16degとなりました。進むことは考えにくいので計測誤差の範囲という理解です。
Hard copy of Bimmerlink_2

従って、当方の車輛のタイミングチェーンはほとんど伸びていないという結論です。ですが、チェーンテンショナーは予防整備の位置づけで交換しておきます。

さて、車輛での交換作業に入ります。
画像中央の排ガス温度センサーのカプラーがものすごく邪魔ですので外しておきます。下部をつまんで引き下げると簡単に外れます。
Gastemp sensor connecter


テンショナー自体は目視不能な場所に設置されていますので、鏡やスマホのカメラを頼りに位置を確認します。画像中央にある6角のものがテンショナーです。

assembled old timing chaine tensioner


使用した工具です。全て1/2Drを使用。かなりな力を要するため。
  • オリジナルテンショナー:2面幅27mmソケット_12角推奨
  • 対策品テンショナー:2面幅24mmソケット_12角推奨
  • ユニバーサルジョイント:首の緩みのないもの
  • エクステンション:緩める際には100mm長が最適 締める際には75mm長が最適
  • トルクレンチ:テンショナーの締め付けトルク70Nm
Tools used

エクステンション100mm+ユニバーサルジョイント+27mmソケット
Tools used

新旧比較
Comparison Old and New tensioner


組付ける際には頭の脇にふたつオイル通路がありますので、ここから事前にオイルを入れておく必要があるため、オイルの中でプランジャーを指で押し戻しを繰り返してオイルをテンショナーの中に入れます。なかなか入っていかないように感じました。内部にワンウエイバルブが内蔵されているとも聞いていますので、ある程度の圧で押し込まないと恐らくオイルは手動では入りませんね。しかしまあ適当に頑張りました。。
エンジン始動後にこの穴からレギュレートされた油圧がかかってプランジャーをストロークさせることになりますが、始動後のオイルプライミング遅れは発生するため、この間だけチェーンが暴れるリスクを事前に予防しておくということですね。

交換完了。作業時間20分でした。交換自体は大したことではありません。
Assembled improved timing chaine tensioner

始動して確認しましたが、直後のみチェーンの暴れ音が僅かにしましたが、直ぐに消えていつもの問題のない静かなエンジン音になりました。予防整備ですのでこれでOKです。

皆さんのN47も少なくともこの作業はしておいた方が賢明と思いますので参考にしてみてください。


ご参考まで
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