2022年7月14日木曜日

BMW E46 M3 赤外線キーレスエントリーの電波化

当方のE46M3は前期型であり、赤外線式のキーレスエントリーシステムです。この赤外線式は、キーを車両の受光部に向けてボタンを押して作動させるのですが、当方の車両の場合はとても感度が鈍く、 クルマの真横からミラー(受光部)にキーを向けないと作動してくれないとても不便な代物でした。加えて、キーのデザインが古臭く、ボタンのゴムも劣化を極めていることから、これを電波式に変更することとしました。


しかし、ネット上に落ちている情報には、E46M3に関するものは多くはなく、代わりに、下記の情報に溢れていました。

  1. 受信システムの電波化:E46後期型のルームミラーをオークション等で入手し、前期型ルームミラーと交換する
  2. 電波送信キーの入手:電波送信基板のついたボタン電池式のブランクキー(中華製)と純正BMWエンブレム(D=11mm)をamazon等で入手
  3. 装着前準備:旧キーからイモビの移植と専門店でのキーの溝切り
コスト的には、
  1. 極めて高価であり、中には2万円前後のものまである
  2. 3000円前後/本で入手できるが予備キーまで入れると6000円前後、BMWエンブレムまで入れると8000円前後となる
  3. キーの溝切りは、4000~5000円/本であり、予備キーまで入れるとその倍となる

極めて高価であり、3~4諭吉は覚悟する必要がある。ということでこれにここまでコストを掛けていられません。また、中華製キーの材質の悪さが折損を招くような懸念や、E46のミラーとなるとオリジナル感が阻害されますので、避けたいところでもあります。

ということで、可能な限りBMW純正部品にこだわった電波式キーレスエントリーとする方向で対応を考えました。 普通に考えれば、電波式キーレスシステム自体はコスト視点でもBMW共通であるはずですし、純正部品の組み合わせで安価に実現できるはずと考え、下記の手段を一旦検討・トライアルしてみました。
  1. 受信システムの電波化:既存のルームミラー内の赤外線式受信部だけを電波式のものに交換する ⇒ 同時代のBMW MINI R50系後期(2005年式以降)のルームミラーならば3000円前後で入手可能
  2. 電波送信キーの入手:BMW純正の電波式キーの中古をネットから入手する ⇒ 安価で売られている。BMW純正品につき、とてもしっかりした造りであるとともに内部基板に信頼がおける
  3. キー自体は、旧赤外線式キーからキー部を抜き取って再使用する ⇒ 専門店での溝切り不要
  4. 非接触充電機能のないE46M3前期型では、バッテリーは通常のボタン電池を設置する ⇒ ボタン電池ホルダーの設置が別途必要
これで、予備キーまで入れたトータルコストは6500円前後で済ますことができましたので、ぜひ試してみてください。

作業工程-1: 旧キー(赤外線式キー)の分解

プラスのネジで蓋されていますので、これを外すと簡単に分解できます。
CR2016×2の6Vで駆動していました。

更に分解します。基板の右上にある台形のチップがイモビライザーです。接着剤で貼り付けてあるだけの代物です。これも丁寧に外し再使用します。

ここから、再使用するキー部分を抜き取ります。使用するのは彫刻刀が最も便利ですのでおすすめです。



作業工程-2:電波式キーの下準備

電波式純正中古キーの入手


入手した電波式純正中古キーを割ります

彫刻刀で割ります。上蓋との境に刃を当てて割ってゆくイメージです。



入手した電波キーのキー部分の撤去

彫刻刀で丁寧にキー根本を掘り返してキーを摘出します。


先に摘出しておいた旧キーのキー部分(下)を移植します。

キー根本装着部をキー形状に合わせて彫刻刀で慎重に整形し、プラリペアを充填して硬化させます。
完全硬化後、彫刻刀で表面をきれいに修正しておきます。


イモビ作動用&非接触充電用コイルの撤去・イモビの設置

電波式のキーには、イモビは基板に物理的に装着されており、また、電池から電源供給を受けて作動しているとのこと。『使用する車両が異なる為、このキーのイモビは非作動化しておく必要がある』こと、また、前期型では、『イモビは単体で使用』と『前期型車両には非接触充電システムはない』 ことから、このコイルは撤去する必要があります。

コイルを挟んでいる爪を開いてコイルを取り出します。


このコイル跡地に先程旧キーから外したイモビを移植します。といっても両面テープで貼るだけですが。



充電型バッテリー(Panasonic VL2020)の撤去とCR1616用ボタン型電池ホルダーの設置

充電型バッテリー(Panasonic VL2020)の外形と厚みを超えない丁度よい大きさのバッテリーとしてCR1616を使用することを前提に、ネットで適当なものを入手します。
これならば、ケースにそのまま収まるはずです。

バッテリー配線を切り離して、

電池ホルダーの位置を決めて接着剤で貼り付け、結線します。

電波式キー側は、これで準備完了です。


受信部の準備

受信部はR50_年式2005.12月のものをネットで購入しました。たくさん安価で売られており、E46後期などと比べるとコストを含め圧倒的に入手しやすいです。


バラして基板を確認して取り出します。


右側のループ部分が受診アンテナ部となります。品番と315MHzの記載もあり、E46後期型と同じものであることが分かります。使用するのはこれだけですので、R50のミラー本体は廃棄ということになります。



受信部のE46M3純正ミラーへの格納

E46M3純正ミラーを分解して中身を確認します。


防眩用の基板が追加されていることと、赤外線受診基板とのリプレイスも容易であることが分かります。


ミラー本体を車両から外して基板を交換します。


配線もピンを入れ替える必要もなくそのまま装着すれば良い状態であることを確認します。
基板はT6の極小トルクスで留まっていますので、T6ドライバーの準備は必須です。


また、基板のアンテナ側がフレームとわずかに(0.5mm程度)干渉します。

干渉する部分を彫刻刀で切削して接触回避します。

あとは、車両に戻して完了です。



キーの車両認識作業

ネットにはたくさん情報がありますが、あえて記載します。
新しいキーを車両が認識するようにする必要がありますので、下記のプロシージャでキーを登録します。

  1. 新しい電波式キーでドアを開閉する
  2. 乗車してドアを締める
  3. イグニッションにキーを差し込み、始動直前(ACCの次)までキーを回してから戻し、キーを抜く
  4. 素早く、キーの解錠ボタンを押しながら施錠ボタンを3回押す
  5. 押していた解錠ボタンを離す
  6. 車両システムが施錠・解錠を自動でおこない、キー登録が完了する
  7. 複数のキーがある場合には、6.の後間髪入れずに4.以降を実施し、同様に登録する

これで大変便利な電波式キーシステムを安価に実現することができました。ルームミラーはオリジナルの外観を保ちつつ、遠方からの開閉錠はもとよりトランクまでリモートで開けられるので大変便利です。みなさんも是非試してみてください。

何よりもBMW純正キーですので安心して使用できます。定期的にバッテリー交換が必要となるかも知れませんが、その点は致し方なしです。
いずれにしても2022年の時代にマッチしていないこの記事もどうかと思いますが。。



■ご参考まで


BMW MINI R53 キーレスエントリーキーのバッテリー交換検討

 突然、R53の電波式キーでのキーレスエントリーが効かなくなりました。調べると、バッテリーはPanasonic VL2020というボタン型のリチャージャブルバッテリーが設定されていて、キーに内蔵されるコイルと車両側に設置されているコイルによる誘導起電力でキーを刺しての走行時に非接触充電されるという仕組みらしい。考え方としては今の時代当たり前のことですが、時代を考えると先を走っていたことがわかります。


いずれにしても、永遠などというモノは無く、このバッテリーが許容充放電回数を超えて終りを迎えたのだろうということでリチャージャブルバッテリーの交換を目論見ました。バッテリーはネットで安価に売られていますので、それを入手。

早速分解しますが、キー自体は基本永久設定のため非分解式。彫刻刀の刃で丁寧に割ります。


基板に非接触充電用コイルが見えます。


さて交換するバッテリーはこちら。


基板からバッテリーを外そうと触ると、、マイナス側のハンダが外れており、ユルユルでした。。 これが原因か。。


ハンダをし直したら、あっさり治りました。。 

ディーラーにお願いするとキー全て作り直しで5諭吉以上という法外な価格設定とのこと。みなさんもバッテリー交換やディーラーへ持ってゆく前に基板のチェックをされることをオススメします。

2液性のエポキシ接着剤で貼り合わせて完了です。作業時間15分でした。


■ご参考まで

2022年7月5日火曜日

BMW E46 M3 デフの左サイドフランジ軸シール交換とミッションオイル交換、クラッチフルード交換

 2年前、デフ右側のサイドフランジ軸シールの交換をおこないましたが、最近、左側からもオイル漏れが顕在化しましたので対応することとしました。また、これまで実施していなかったミッションオイルとクラッチフルードの交換も併せておこないました。



■ブレーキフルード: BMW純正DOT4


■ミッションオイル: Mercedes純正ATF MB236.14  1L×2本 


■デフサイドフランジ軸シール、Oリング:アフターマーケットパーツ





先ずは、可能な限り高く持ち上げます。


これくらい持ち上げておけば、寝板の高さを加味しても下廻りの作業で困ることはありません。

作業をメインで行ったため詳細に撮影はできていませんが、先ずはミッション下のパネルを外すところから開始します。全て8mmのソケットで作業します。パネルを2つ外すとミッションが見えるようになります。


ちなみに、クラッチホースの取り回しはこんな感じになっています。

クラッチホースも目視にて特に問題ないことを確認。


先ずはクラッチフルードを交換します。ブレーキフルードと共用ですので、クラッチライン内に入っているフルードを入れ替えるイメージでおこないます。かみさんにクラッチを踏んでもらいました。。色的には劣化は見られませんでした。ニップルは7mmのメガネ或いはフレアレンチでおこないます。



続きましてミッションオイルを交換します。先ずはフィラー側のボルトが外せることを確認しました。フィラー側ドレイン側共に17mmのソケットです。


確認できたらドレインを外します。さてこの車両のミッションオイルは何が入っているか、、
だいぶ汚れたギヤオイルでした。。ゲトラグはATF指定。今回はBMW MTF LT-2は高価過ぎて手が出ませんでしたが、同等品質のMercedes ATFでいくこととします。


フィラー側ドレイン側共にストレートネジなので、シールテープを巻いておきます。ドレインを締めてからATFを1.8L入れたところでフィラー口から溢れてきました。既定値通り。


さて、今回の作業の主目的のデフ左側サイドフランジ軸シール・Oリング交換に移行します。
左側は丁度排気系がドライブシャフトの真下を通っているため、排気系をどかさないと作業ができません。しかしとても重いはずの排気系は全てを外さずに、横にどかす方向としました。

とは言え、排気系をどかすためにアンダー廻りの各種ブラケットを取り外す必要があります。

取り外し-1) V字の剛体バー

中央部のボルトはM10で14mmのソケット


両端部のボルトはM12で16mmソケットです。かなりきつく締まっているのでどちらもインパクトでガガッと緩めます。


2) 排気系マウントブラケット+剛体バー

全てM8で13mmのソケットです


3) フロントパイプとの連結を緩めておく

E12のトルクスボルト+アタマ14mmのナットで縫ってあります。取り外す必要はありません。緩めるだけでOKと思います。


4) サイレンサーとの連結を切ります

アタマ13mmのM8ボルト×4本で締まっています。


この状態までくると排気系リア側が落ちますので、キャタのフランジあたりをジャッキで支えてやりながらデフの作業場所から離してあげます。今回はアルミワイヤーでリアブレーキキャリパーに結びつけて逃してやりました。



さて、ようやくドライブシャフトを切り離すことができます。E12トルクスボルト6本を先ずは緩めます。サイドブレーキを掛けた状態で緩めることができますが、位置を動かすために逐一サイドブレーキを落としてドラシャを廻してから再度サイドブレーキをかけるという作業を数回行ってボルトを緩めます。



ドラシャを切り離せたらサイドフランジを抜き取ります。バールでこじると簡単に抜けます。コツは内部のCリングから切り離すために『衝撃で抜く』ことですね。
最後にサイドフランジケースを固定しているアタマ13mmのボルトを外し、プラハン等で叩きながら丁寧にケースを抜き取ります。


摘出したサイドフランジ+ケース


ケースのフッ素Oリングはヘタっていました。断面が角でした。。 軸シールのリップ部は目視では特にダメージは分かりませんでしたが、緊迫力は落ちていたのでしょうね。
ちなみに、深さ方向の軸シールの位置決めがありませんので、軸シールを取り外す前にリップがどの位置にあるかを計測するなり画像を取るなどしておいたほうが賢明です。シール自体はサイドベアリングのアウターレースにあたるまで如何ようにでも入りますので。アウターレース際まで入れてしまうとサイドフランジのシール位置を外してしまってダダ漏れとなりますのでご注意ください。




シール位置を確認したら、私はプレスで抜き差しします。前回と同様に、プジョー106のタイベルテンショナーベアリングが丁度よい治具になるのでこれを使用しています。

先ずは抜いて、

入れます。

ちなみにプジョー106のタイベルテンショナーベアリングです。径がぴったりなのと裏側がツバになっていて、都合が良いのです。。ご参考まで。

表面

裏面



最後にOリングも嵌めてデフに装着します。嵌合はかなりタイトですので、ボルト穴位置を合わせながら少しづつ挿入していきます。私は長めのM8ボルトで位置合わせをしました。このサイドフランジケースは、ベアリングへのオイル流路の関係で位置が決まっている為、必ずマーキングをしておいて間違いのないように組み付けます。

後はサイドフランジを叩き込んでドライブシャフトを装着して完了です。

そうそう、今回、デフケース前方のマウントの状態を確認しました。対策品のゴム品に交換してあり、劣化は見られず。安心しました。




さて、今回の作業で活躍したMVP工具は下記です。同じような作業を予定されている方はこれらを使用すると色々と助かるかと思います。

・E12/E14のストレートメガネ
・13mmラチェットメガネ
・百均アルミワイヤー
・ストレートのピッキングツール



・インパクトレンチ



・バール



※後日追記:ミッションのシフティングも更にスムースになり、調子良い感じです。また、当然ですがデフオイル漏れなきことを確認しました。


■ご参考まで  

※現在、33111214144 Oリング(D=90mm/3mm)は通常のECサイトでは欠品の様子。ディーラーなりパーツ屋さん等で探すのが賢明です


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